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福岡県は、水素産業やスポーツ、観光等の分野において、オーストラリアの経済・文化の中心である州都シドニーを擁するニューサウスウェールズ州政府と緊密な連携を図っています。8月3日(土)から8日(木)に、知事、県議会議長をはじめとする「福岡県・ニューサウスウェールズ州交流促進訪問団(以下、県訪問団)」がニューサウスウェールズ州を訪問しました。
また、本年は、本県と縁の深い同州カウラで発生した日本人捕虜集団脱走から80周年の節目にあたり、カウラ市長からの招へいを受けて、現地で開催される記念慰霊式典に参加しました。
サブロー・ナガクラ・パークは、九州電力の元会長である永倉三郎氏が、1978年にカウラを訪れた際に、オーストラリア人および日本人の戦死者墓地がカウラ市民から大切に維持・保存されていることに感銘し、自らの資金を拠出して永倉財団を設立し、公園として整備したものです。
記念式典参加に先立ち、訪問団は当地を訪れ、永倉三郎氏のご子息で永倉財団の理事長である永倉成二氏から、カウラ市民の憩いの場として親しまれている同パークの設立から現在に至るまでの経緯や管理状況について説明を受けました。
(写真)サブロー・ナガクラ・パーク
(写真)永倉理事長から説明を受ける知事
訪問団は、カウラ日本人捕虜集団脱走80周年記念式典市長主催公式夕食会に出席し、ルース・フェイガンカウラ市長や、ビル・ウェスト前カウラ市長、豪州ニューサウスウェールズ州関係者らと懇談しました。
(写真)ビーズリー州総督(中央)、フェイガン市長(左)と懇談する知事
(写真)夕食会に参加された皆さん
【参考】カウラ日本人捕虜集団脱走事件(カウラ・ブレイクアウト)
カウラ市には第二次大戦当時、連合軍により捕虜収容所が置かれていました。1944年(昭和19年)8月5日、日本人捕虜の集団脱走事件(カウラ・ブレイクアウト)が発生し、犠牲者(豪州人の収容所衛兵4名を含む)は235名を数えました。その後、1964年(昭和39年)に日本人戦争墓地が整備され、集団脱走事件の犠牲者や戦死者等約500名の日本人が埋葬されています。本年は同事件から80周年に当たり、8月4日および5日にカウラ市主催で記念慰霊式典が行われました。
訪問団は、カウラ日本人脱走事件の犠牲者が眠るオーストラリア人、日本人戦争墓地で献花を行い、亡くなられた方を追悼しました。
(写真)日本人戦争墓地における献花
(写真)美しく整備されている日本人戦争墓地
1944年8月5日のカウラ脱走事件後、農場に逃げ込んだ脱走日本兵捕虜に、農場のメイ・ウィアー夫人がジャムとクリームを添えたスコーンとお茶を提供した逸話に基づき、カウラ日本庭園でお茶会が開催されました。メイ・ウィアー夫人の行為は、カウラの地元住民と日本人捕虜との間で、脱走後初めて行われた敬意と和解の象徴とされています。参加者には当時と同じくジャムとクリームを添えたスコーンと紅茶が振る舞われました。
知事は、「市民と市民の友好の絆と平和への思い、これを後世に伝えていくことは大変重要。今後も、スポーツをはじめさまざまな分野で未来を担う若い人たちの交流を発展させ、福岡県とニューサウスウェールズ州、日本とオーストラリアの理解と友好を深めてまいりたい」と挨拶しました。
(写真)会場の日本庭園にてビーズリー州総督(右)、フェイガン市長(左)と
(写真)あいさつする知事
令和4年度から実施している国際人財育成事業などについての活発な意見交換が行われました。知事は、シドニーとの交流の架け橋として協力いただいている県人会の皆様に感謝を述べるとともに、「来年は、第12回福岡県人会世界大会が福岡で開催される。皆さんの里帰りをお待ちしている」とあいさつしました。
(写真)県人会の皆さんと県訪問団
英語を母国語としない生徒が、中学校、高校の授業についていける英語力を身に付けるため、ニューサウスウェールズ州政府が設置しているインテンシブ・イングリッシュ・センター(ハイスクール)を訪問し、同施設の取り組みを視察しました。
知事はあいさつの中で「世界から選ばれる福岡県の実現のためには、海外から来られた皆さまが、安全で安心して、そして快適にストレスなく暮らすことができ、活躍していただける環境を整える必要がある。日本語教育は極めて大きな課題であり、このハイスクールの取り組みを学ばせていただきたい」と述べました。
(写真)あいさつする知事
(写真)意見交換の様子
現地旅行会社、メディア等約50名を招いて、本県の食・観光をPRするセミナーを開催しました。知事は冒頭のあいさつにおいて、「福岡県の魅力は、何と言っても『食』。福岡は食の都、『食都ふくおか』」と紹介しました。
セミナー後の交流会では、八女茶や県産酒を堪能していただき、最後に全員で「炭坑節」を踊って締めくくりました。
参加者からは「アクセスや四季折々の見どころなどの情報が豊富で、非常に役に立った。早速ツアー商品を造りたい」といった声が寄せられるなど、今後、オーストラリアからのさらなる誘客が期待されるセミナーとなりました。
(写真)本県の魅力をPRする知事
(写真)現地旅行会社との意見交換
ニューサウスウェールズ州教育省を訪問し、マーティン・グラハム副長官をはじめとした政府関係者と意見交換を行いました。
知事が「両県州の高校でスポーツ選手の相互交流を行っていきたい」と述べたのに対し、グラハム副長官から「将来、相互交流をきっかけに、お互いの選手がひとつのチームとして試合に出る、あるいはオリンピックに一緒に出場するなど、そのような機会が生まれれば素晴らしい」との発言があり、両県州の教育分野での関係の端緒を開くことができました。
(写真)意見交換を行うグラハム副長官と知事
(写真)教育省の皆さんと県訪問団
同州政府アナラック・チャンシヴォン産業貿易大臣およびペニー・シャープ エネルギー環境大臣を表敬訪問し、水素エネルギー分野をはじめとした両地域の産業貿易に関する意見交換を行いました。
知事が「カーボンニュートラルのキーテクノロジーである水素エネルギーについてさらに協力を進めていきたい。今後、オンライン会議などで、両県州での情報交換をこれまで以上に密接に行っていきたい」と述べたのに対し、産業貿易大臣は「福岡県とニューサウスウェールズ州は共に同じ方向に進んでいる。お互いに協力しながら進めていきたい」と応え、今後も協議を継続していくことを確認しました。
(写真)チャンシヴォン大臣(右から3番目)と県訪問団
現地学校やニューサウスウェールズ州教育省等の関係者を招いて、教育旅行先としての本県の魅力をPRするセミナーを開催しました。
セミナーでは、太宰府天満宮や九州国立博物館などの施設や、博多人形の絵付けや陶芸などの伝統工芸体験を紹介しました。現地学校関係者からは、「子どもたちに伝統工芸の体験をさせたい」、「日本の学校と交流はできるのか」といった意見や質問が多数寄せられ、盛況のうちに終了しました。
(写真)本県の魅力をPRする知事
(写真)教育旅行セミナーの様子
在シドニー日本国総領事館をはじめ、自治体国際化協会シドニー事務所、ジェトロシドニー事務所、ニューサウスウェールズ州ラグビー協会、永倉基金、現地日系商社など、本県とニューサウスウェールズ州との交流促進にご協力いただいている関係者と今後の両地域の交流について意見交換会を実施しました。
知事は、「今回の訪問を契機に、両地域の連携がさらに深まることを期待している」とあいさつしました。
(写真)意見交換の様子
(写真)ニューサウスウェールズ州関係者の皆さんと県訪問団
ニューサウスウェールズ州の水素拠点となるニューカッスルでは、二酸化炭素を固定化し、建築用資材などの製造技術を有するエムシーアイ・カーボン社と、同社が実証プラントを設置するニューカッスル大学エネルギー資源研究所を訪問しました。
知事は、「福岡県とニューサウスウェールズ州との間で締結した水素分野における協力促進に関する覚書に基づいて、今後あらゆる機会を捉えて、両地域間の企業のビジネスマッチング、あるいは大学間の交流を積極的に進めていく。両県州の産業経済の発展のために、お互いにとってウィンウィンの関係を築いていきたい」と述べました。
(写真)研究所の説明を受ける様子
(写真)建築用資材の製造過程について説明を受ける様子
ニューカッスルに大規模なアンモニア製造プラントを設置するオリカ社は、グリーン水素製造に向けた「ハンター・バレー水素・ハブ・プロジェクト」を進めています。
知事は、「福岡県では水素大規模拠点の構築に向けた取り組みを進めている。水素の利用、活用を進めることは、地球環境を守り経済産業を発展させ、環境と経済との好循環を生み出す。これから私たちと力を合わせ、グリーン水素社会の構築のためにご協力をお願いしたい」と述べました。
(写真)プラントで説明を受ける様子