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福岡県労働委員会委員コラム 第8回
第8回
「労働者の権利と労働委員会」
労働者委員 金光 千春
日本の憲法では、労働者の権利として労働基本権(第28条)を保障しています。労働基本権は労働三権とも呼ばれ、「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」が認められています。 一人ひとりの労働者は、使用者に対して弱い立場にあることを踏まえ、労働基本権が保障されているのです。あわせて、労働者を守る基本的な法律として「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」もあります。 法律上、労働者は守られているはずですが、現実には長時間労働やあらゆるハラスメントの問題等、労働者の権利が保障されているとは言い難い状況もあります。また、社会の変化とともに、多様な就業形態や個別契約に基づく働き方などが拡大し、労働者と使用者の関係性も複雑化してきています。 使用者と対等な立場で協議や交渉を行うためにも、労働者としての権利を知ることが必要であると同時に、労働組合の存在は重要です。
「労働組合」と聞いて嫌悪感や悪いイメージを抱く方もおられますが、労働組合の活動は賃金闘争のみにとどまらず、労働条件の改善など「働きやすい職場づくり」にも取り組んでいます。働きやすい職場になることで労働者のモチベーションが上がり、会社の業績に繋がれば労使双方にとってのメリットであり、弱者の立場に立って物事が改善されることは、多くの人にとってのメリットとなり得ます。
労働委員会は、主に労働組合と使用者間の労働争議のあっせん、調停および仲裁並びに不当労働行為事件の審査を行う機関です。 令和5年10月から11月にかけて実施された県政モニターアンケート調査において、労働委員会について「名前も知らなかった」という回答結果が50.55%でした。半数以上の人が労働委員会を知らないということです。 労使間の問題について当事者だけの協議では平行線のままでも、労働委員会が間に入ることで解決の糸口が見つかるかもしれません。 問題の早期解決のためにも、もっと多くの方に労働委員会を知っていただき、相談していただきたいと思います。 |