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福岡県労働委員会委員コラム 第14回
第14回
「快適な職場環境づくりは労使双方にとってメリット」
労働者委員 藤田 桂三
2020年8月、委員に任命され、この間、多くの労使紛争の調整、不当労働行為の審査事件に関わってきました。各事件では、労働者側(組合)および使用者側(経営者)から真摯に事情を聴取しながら争点を整理し、労使双方がより納得のできる形で課題の解決がはかられるよう公益・労働者・使用者の各三者委員での努力を重ねており、福岡県の各事件処理日数は全国の中でもトップレベルに短い(手続が迅速)です。 一方で、使用者側の無理解や不誠実な対応、労働者側の頑なな姿勢などにより、残念ながらあっせん調整(和解)等の打切りや労使双方にとって不本意な命令書の発出、結果として中央労働委員会への再審査申立や裁判闘争へ移行となることもあります。こうした状況は、労使双方にとって不幸な出来事です。 これらを通じて痛切に感じるのは、使用者の皆さんには従業員を雇用している責任を踏まえ労働関係法令について十分に理解を深めていただくことはもとより、労働者自身も法令についてもっと学んでほしいということです。法律を知ることは労働者の権利を守ること(知らないとお互い損をすること)であり、使用者にとっては法令を遵守することで企業価値を高めることにもつながります。 超少子高齢・人口減少社会の加速、労働力不足と多様な雇用形態、長引く原材料・エネルギー価格の高騰と物価高、地球環境問題への対応やDXをはじめとする産業構造の変化など重たい課題がのしかかっています。これらの課題は、暮らしや働き方に直結しており、信頼関係に基づいた健全な労使関係によるお互いの立場の尊重と協力なしに乗り越えていくことは困難です。 そのために大切なことは、使用者側と労働者側が日頃から真摯に話し合いの場を持つことだと考えます。それぞれの職場において、労使で賃金や労働条件などについて話し合うことは、いきいきとやりがいを持って働き続けられる職場につながっていきます。「快適な職場環境づくり」は、従業員のモチベーションを高め当然企業の業績にもつながり、「労使双方にとってメリット」であるということを是非皆さんにお伝えしたいと思います。 労働委員会の役割は、単に事件を解決するだけではなく、労使が信頼関係のもと誠実で良好な集団的労使関係を継続的に構築していくことにあります。もしもの労使紛争の際には、労働委員会制度を有効にご活用ください。また、労働組合がない職場で働いている労働者の皆さんは、働く上での悩み・不満、組合を結成したいなどの思いがあれば、行政機関(福岡県労働者支援事務所、国の労働局・労働基準監督署)や一人でも加入・相談できる地域ユニオン・合同労組に気軽に相談してください。 |