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福岡県労働委員会委員コラム 第12回
第12回
「使用者と労働委員会」
使用者委員 内場 千晶
皆さん、労働委員会をご存じでしょうか? 福岡県労働委員会は、公益・労働者・使用者の各7名計21名の委員で構成されます。企業には「正社員」「契約社員」「派遣社員」「パート・アルバイト」といった雇用形態が異なる労働者が混在しており、労働関係のトラブルも様々です。そうした中で、労働組合と使用者の間のトラブル解決に向けたお手伝いをするのが労働委員会になります。 労働委員会では、公益・労働者・使用者それぞれの委員が連携し一体となって、労働争議の調整や不当労働行為の審査を行い、和解に向けた手助けや審査の結果によっては命令を出すといったことを行います。 労働委員会は労働組合と使用者のトラブルを解決する機関と申し上げましたが、労働組合がない企業にとっても決して他人事ではないのです。自社に労働組合がない労働者は合同労組に加入し申立てができますし、場合によっては労働組合がある企業の労働者が新たに合同労組に加入し申立てることもあります。近年は、こうした合同労組からの申立てが大変多くなっているのが現状です。私が労働委員会の使用者委員に就任してこれまで担当した案件のほとんどが合同労組からの申立てでした。中小企業では労働組合がない企業が多く、また、労働法令や労働問題に詳しくない使用者が多く見受けられ、ある日突然合同労組から団体交渉の申入れに困惑され、対応に戸惑われている方もいます。合同労組から労働委員会へ申立てられ、事務局からの連絡で慌てて弁護士など専門家の方を手配されるといった使用者もいます。 使用者委員として案件を担当する中で改めて痛感するのは、特に限られた人員で事業運営を行う中小企業の使用者は労働法令に関する知識を持つことが重要だということです。使用者には従業員の雇用や生活を守る責任がありますので、従業員が労働条件や処遇などに不満を持ち、労働争議などに至るのは不本意なことです。労働法令を理解することで、日頃から適切な判断をし、問題が起きた時も迅速に対応でき、労働争議などに至ることもなく、円滑な労使関係に繋がるのではないでしょうか。 少子高齢化により企業にとって人材の確保は大きな課題であり、シニア層や外国人など従業員の多様化が進むことが予想されます。また、コロナ禍以降進んだテレワークやフレックスタイム制、短時間勤務、副業などの働き方や雇用形態も多様化しています。こうした状況を考えると、使用者と従業員のトラブルもこれまで以上に複雑化しそうです。 使用者と労働組合のトラブルの際には、ぜひ労働委員会へご相談ください。公平な立場で解決へ向けてお手伝いを致します。 |