本文
障害者差別解消法の施行について(宅地建物取引業)
障害者権利条約の批准に向けた国内関係法令の整備の一環として、平成25年6月に成立した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)」(障害者差別解消法)が、平成28年4月に施行されました。
同法は、制定趣旨として障がい者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供を差別と規定し、事業者に対し、差別の解消に向けた具体的取組を求めるとともに、普及啓発活動等を通じて、障がい者も含めた国民一人ひとりが、それぞれの立場において自発的に取り組むことを促しています。
更に障がいを理由とする差別を解消するための措置として、民間事業者に対して「差別的取扱いの禁止」及び「合理的配慮の提供」を課しており、その具体的な対応として、国土交通省では事業者向けの「国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」(ガイドライン)を策定し、公表しております。
当該指針の11ページ【具体例(宅地建物取引業)】では、次のような例が示されています。
1 不当な差別的取扱い
(1)正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例【禁止事項】
※違反の場合、宅地建物取引業法第31条(業務処理の原則(信義誠実義務))に抵触し、指導等の対象になることもあります。
-
物件一覧表に「障がい者不可」と記載する。
-
障がい者に対して、「当社は障がい者向け物件は取り扱っていない」として話も聞かずに門前払いする。
-
賃貸物件への入居を希望する障がい者に対して、障がいがあることを理由に、賃貸人や家賃債務保証会社への交渉等、必要な調整を行うことなく仲介を断る。
-
賃貸物件への入居を希望する障がい者に対して、先に契約が決まった事実がないにもかかわらず、「先に契約が決まったため案内できない」等、虚偽の理由にすり替えて説明を行い、賃貸人や家賃債務保証会社への交渉等、必要な調整を行うことなく仲介を断る。
-
障がい者に対して、客観的に見て正当な理由が無いにもかかわらず、「火災を起こす恐れがある」等の懸念を理由にしたり、一人暮らしを希望する障がい者に対して、一方的に一人暮らしは無理であると判断したりして仲介を断る。
-
車いすで物件の内覧を希望する障がい者に対して、車いすでの入室が可能かどうか等、賃貸人との調整を行わずに内覧を断る。
-
障がい者に対し、障がいを理由とした誓約書の提出を求める。
-
賃貸物件への入居を希望する障がい者に対し、障がいがあることを理由として、言葉遣いや接客の態度など一律に接遇の質を下げる。
-
障がい者が介助者を伴って窓口に行った際に、障がい者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。
-
障がいがあることのみを理由として、一律に、障がい者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。
-
障がいがあることやその特性による事由を理由として、契約の締結等の際に、必要以上の立会者の同席を求める。
(2)障がいを理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例
- 障がいの状況等を考慮した適切な物件紹介や適切な案内方法等を検討するため、必要な範囲でプライバシーに配慮しつつ障がい者に障がいの状況を確認する
2 合理的配慮
(1)合理的配慮の提供の事例
- 障がい者や介助者等からの意思の表明に応じて(障がい特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。以下同じ。)、バリアフリー物件等、障がい者が不便と感じている部分に対応している物件があるかどうかを確認する。
- 物件案内時に、障がい者や介助者等からの意思の表明に応じて、車椅子を押して案内をする。 等
(2)合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例
- 内見等に際して、移動の支援として、車椅子を押して案内を行う、事務所と物件の間を車で送迎する等の対応を求める申出があった場合に、「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断る。 等
(3)合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる事例
- 宅建業者が、歩行障がいを有する者やその家族等に、個別訪問により重要事項説明等を行うことを求められた場合に、個別訪問を可能とする人的体制を有していないため対応が難しい等の理由を説明した上で、当該対応を断ること。(なお、個別訪問の代わりに、相手方等の承諾を得て、WEB会議システム等を活用した説明を行うこと等により歩行障がいを有する者が不動産取引の機会を得られるよう配慮することが望ましい。)
詳しくは国土交通省ホームページ(バリアフリー:障害を理由とする差別の解消の推進)をご覧ください。