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台所換気扇フィルター等の訪問販売事業者に対する業務停止命令、業務禁止命令及び指示を行いました
集合住宅等の各戸を個別訪問し、「換気扇の説明をさせてください。」などと勧誘目的を告げずに消費者宅へ上がりこみ、「隣にも買ってもらっています。」などと事実と異なることを告げて、勧誘を行っていた訪問販売事業者に対し、本日(令和元年11月27日)付けで、特定商取引に関する法律(以下「法」という。)第8条第1項の規定に基づき、訪問販売に係る業務の一部を24か月間停止するよう命じるとともに、同事業者の代表者に対し、当該停止を命ずる範囲の業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることの禁止(24か月間)を命じました。
あわせて、同事業者に対し、法第7条第1項の規定に基づき、業務改善を指示しました。
認定した違反行為は、勧誘目的等不明示、交付書面記載不備及び不実告知です。
1 事業者の概要
(1) 事業者名:クリーンフィルターこと橘 順一
(2) 代表者:橘 順一(たちばな じゅんいち)
(3) 所在地:福岡市南区
(4) 設立:平成29年8月頃
(5) 取引形態:訪問販売
(6) 取扱商品:台所換気扇枠及びフィルター
(7) 売上高:6,625,900円(平成30年1月から平成30年12月までの間)
(8) 従業員:なし(代表者のみ)
(9) 過去の処分歴(2回)
ア 業務停止命令3か月間(平成26年7月5日から平成26年10月4日まで)
※ 当時の屋号は「エコ.クリーン」
イ 業務停止命令12か月間(平成28年8月26日から平成29年8月25日までの12か月間)
※ 当時の屋号は「フィルター本舗」
2 処分の原因となる事実
(1) 勧誘目的等不明示(法第3条)
同事業者は、消費者宅を訪問するに際し、「換気扇の説明をさせてください。」などと告げるのみで、勧誘に先立
って、氏名及び売買契約の締結について勧誘することが本来の目的であることを明らかにしていなかった。
(2) 交付書面記載不備(法第5条第1項)
同事業者が消費者に交付していた書面には、赤枠の中に赤字で記載すべき以下の事項が記載されていなかった。
ア 書面の内容を十分に読むべき旨(特定商取引に関する法律施行規則(昭和51年通商産業省令第89号。以
下「施行規則」という。)第5条第2項)
イ クーリング・オフに関する必要的記載事項(施行規則第6条第1項の表上欄一下欄ロ及びヘ)
(3) 不実告知(購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの)(法第6条第1項第7号)
同事業者は、勧誘に当たり、事実に反して「隣にも買ってもらっています。」などと告げ、消費者が契約を締結する
場合の意思形成に対して重大な影響を及ぼす事項について不実、つまり事実と異なることを告げていた。
3 処分の内容
(1) 業務停止命令
令和元年11月28日(命令の日の翌日)から令和3年11月27日までの24か月間、法第2条第1項に規定する訪問販売
に関する業務のうち、同事業者が行う次の業務を停止すること。
ア 売買契約の締結について勧誘すること。
イ 売買契約の申込みを受けること。
ウ 売買契約の締結をすること。
(2) 業務禁止命令
令和元年11月28日(命令の日の翌日)から令和3年11月27日までの24か月間、法第2条第1項に規定する訪問販売
に関する業務のうち、同事業者に対して行う上記3(1)の業務停止を命ずる範囲の業務を営む法人の当該業務を担当
する役員となることを禁止すること。
(3) 指示
同事業者は、法第3条に規定する訪問販売における勧誘目的等の明示義務に違反する行為、法第5条第1項に規
定する書面の交付義務に違反する行為及び法第6条第1項第7号の規定により禁止される「顧客又は購入者の判断に
影響を及ぼすこととなる重要なもの」についての不実告知を行っていた。かかる行為は法に違反するものであることか
ら、同事業者は、次の事項を遵守すること。
ア 今回の違反行為の発生原因について、調査分析の上検証し、その検証結果について、令和元年12月27日まで
に、福岡県知事宛てに文書により報告すること。
イ 今回の違反行為の再発防止策及びコンプライアンス体制を構築し、当該再発防止策及び当該コンプライアンス
体制について、本件業務停止命令に係る業務を再開する1か月前までに、福岡県知事宛てに文書により報告す
ること。
4 相談状況(平成29年8月以降) 48件 ※平均年齢 30歳
5 取引事例
別紙のとおり
(別紙) クリーンフィルターこと橘 順一の取引事例
事例1
消費者A男は、新築の賃貸住宅に入居して間もない平成30年11月頃、事業者が訪問してきたため、インターホンで返事をしたところ、事業者は、「各家を回っています。換気扇のフィルターの取付け方、掃除の仕方などを説明しています。」などと言った。 その日は、不動産屋の指定のトイレ工事の業者なども来ていたことから、A男は、「前置きなく、指定の換気扇の業者がきたのかな。」と思い込み、玄関を開けると、事業者が、「換気扇を見てみましょう。」と言ったため、「新しい入居者に対する設備の説明だ。」と思い、事業者が家の中に入ることを許可したが、事業者からは台所換気扇フィルターを売りに来たなどとは告げられなかった。 事業者は、換気扇に白い綿のような台所換気扇フィルターを当てながら、「新築は、フィルターを付けた方が良い。市販のフィルターは1~2か月に1回は交換しないといけないが、うちのフィルターは市販されておらず、2か月に1回交換すれば中が汚れず掃除もしなくていい。引っ越してもそこの換気扇に合うフィルターと無料で交換する。」、「隣にも買って貰った。隣のご主人さんは『換気扇掃除は自分の仕事だったが、楽になって良かった。』と言っていた。」などと言い、台所換気扇フィルターの勧誘を行った。 A男とA男の妻は、事業者が不動産屋と提携している換気扇の業者と勘違いしていたので、事業者の勧める台所換気扇フィルターを付けなくてはいけないものと思い込んでおり、また、隣の家も買っていると聞いたことで、「掃除もいらない良い製品みたいだ。隣の人が買っているのなら間違いないだろう。」と思い、台所換気扇フィルターを購入することにした。 また、契約後に事業者から名刺を渡されたが、このとき初めて業者の名称が「クリーンフィルター」であり、事業者の氏名と事業者がその代表者であるということが分かった。 事業者は、帰る間際になって、「私は訪問販売業者で、不動産屋とは何の関係もない。」と言ったことから、事業者が管理会社とは関係がないことが分かった。 後日、A男が隣人に台所換気扇フィルターのことについて確認するも、隣人は台所換気扇フィルターを購入していなかった。 |
事例2
消費者B男は、新築マンションに入居して間もない平成30年12月頃、何度か訪問してきていたことを把握していた事業者が訪問してきたため、「何度も尋ねて来るぐらいだから大事な用件があるのかな。」と思い、インターホンで返事をしたところ、事業者が換気扇の点検に来たようなことを言ったことから、B男は、「管理会社と提携している換気扇の会社の人だ。」と思い、オートロックを解除して、事業者をマンション内に入れた。 事業者は、身分証なども下げていなかったが、玄関で「換気扇の説明をさせてください。他の家も回っています。」と言ったため、B男は、「確かに換気扇の取扱説明書はあるが、管理会社から使用方法などについて説明は受けていない。」と、台所換気扇フィルターの業者が使用方法などの説明に来たと思い、事業者を家の中に入れた。 事業者は、台所に行くと手慣れた様子で換気扇のカバーを外し、既にB男が取り付けていた市販の台所換気扇フィルターを見ながら、「このフィルターは市販品ですね。うちのフィルターは厚くて長持ちする。他の人も使っている。」などと言ったため、B男は、「この人は、管理会社から委託された換気扇フィルターの業者で販売もしているのかな。」と思い、「皆使っているし、私も付けないといけない。」と思い、事業者の勧めるまま台所換気扇フィルターを購入することにした。 |
事例3
消費者C女は、新築アパートに入居して間もない平成31年1月頃、事業者が訪問してきたため、インターホンで対応したところ、事業者は、「換気扇を見せてください。」と言った。 C女は、引っ越してきたばかりの頃であり、ガスや電気などの色々な業者が毎日のように来ていたので、今度は管理会社から委託された換気扇の専門の業者が点検か説明に来たものと思い、「見せんといかんのかな。」と思い、玄関を開けた。 事業者は、身分証を身に付けていなかったため、C女は事業者が何処の誰だかは全くわからなかったものの、「換気扇フィルターの説明をします。いいフィルターがあります。500円でずっと使える。ホームセンターでも同じ値段で売っているが、すぐに真っ黒になる。これは分厚くて品質が良い。」などと話し続けたことから、C女は、事業者のことを管理会社から依頼された専門の業者と思い、事業者が家に上がり換気扇を見るということを了承した。 事業者は、台所に行くと、手慣れた様子で換気扇のカバーを外したりして点検をしているように振る舞い、「お宅に来る前に2軒回ってきたが、共にファミリー世帯で1軒目はこれ、2軒目はこれを買った。」などと台所換気扇フィルターのサンプルを見せながら、このアパートの人達も買っていると話したため、C女は、「アパートでは、皆さん付けているのかな。」と思い、さらに事業者は、この台所換気扇フィルターを取り付けている人の話として、「換気扇のフィルターを取り替えるのが面倒だったが、これを買って良かった、掃除をしなくていいので楽になったなどと喜ばれている。」と言ったので、「買わないといけないだろうな。」と思い、事業者の勧めるまま台所換気扇フィルターを購入することにした。 |
事例4
消費者D女は、新築アパートに入居して間もない平成31年3月頃、以前に訪問してきていたことを把握していた事業者が訪問してきたため、インターホンに出ると、事業者は、点検に来たようなことだけを言った。 D女は、アパートに引っ越して1週間もたっておらず、電気や水道などの手続きがあっていろいろな人が訪ねて来たことから、「管理会社の関係の人かな。前にも来ていたようだし、まだ終わっていない何かがあるんだろうな。」と思い、玄関を開けたところ、事業者は、「フィルターの説明をするので、上がらせてもらいます。」と言ったので、家には自分1人しかいなかったが、事業者を家に入れた。 事業者は、家に入るとまっすぐ台所に行き、換気扇を見始め、D女が取付けていた市販の不織布の台所換気扇フィルターを指して、「今使っているフィルターは、使えないんですよね。」と説明し、自分が持って来ていた台所換気扇フィルターを取り出して、その機能性などを説明し始めた。 D女は、事業者が、「このアパートは1人暮らしの方が多いんですね。他の人にも買ってもらって喜んでもらっています。」と言ったため、「私が付けたのは駄目だって言っていたし、正規のものにしなくちゃいけないんだろうな。1回来て、今日また来ているし、管理会社の人が言うくらいだから、必要なものなんだろうな。アパートの他の人も買っているみたいだし、買うのが当然なんだろうな。」と思い、事業者の勧めるまま、台所換気扇フィルターを購入することにした。 そして事業者は、全ての手続きが終わった後、「これは不動産屋の決まりじゃありません。押し付けとかじゃありませんからね。」などと言ったことから、D女は、「この人は管理会社の人じゃない。フィルターを売りに来ただけだ。」と分かった。 |