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令和5年人事委員会勧告
令和5年「福岡県の職員の給与等に関する報告及び勧告」の概要
本年の給与勧告のポイント
月例給、ボーナスともに引上げ
- 民間給与との較差3,956円(1.09%)の解消を図るため、初任給を始め若年層に重点を置いて給料表を引上げ改定
- 民間の支給割合に見合うよう、期末・勤勉手当(ボーナス)を0.10月分引上げ
(年間支給月数4.40月分 → 4.50月分)
1 人事委員会勧告制度の基本的な考え方
本委員会は、地方公務員法に基づき、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件が社会一般の情勢に適応するように、民間事業所の従業員の状況、国及び他の地方公共団体の職員の状況等を考慮した上で、労働基本権制約の代償措置として、職員の給与等に関し、報告及び勧告を実施
2 民間給与との比較に基づく給与改定等
(1)職員給与と民間給与との比較
企業規模50人以上で、かつ、事業所規模50人以上の県内の民間事業所2,207事業所から504事業所を無作為に抽出して調査を行い、把握した民間給与と職員給与を比較
ア 月例給
民間と県職員の本年4月分給与の額について、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴を同じくする者同士を対比させ比較。職員給与が民間給与を3,956円(1.09%)下回る。
民間給与(A) |
職員給与(B) |
公民較差(A-B) 〔(A-B)/B×100〕 |
368,011円 |
364,055円 |
3,956円 〔1.09%〕 |
※職員給与:行政職給料表適用職員のうち、行政職俸給表(一)の適用を受ける国家公務員に相当する職員(平均年齢41.5歳、平均経験年数19.7年)の平均給与月額
イ 期末・勤勉手当(ボーナス)
昨年8月から本年7月までの直近1年間の民間の支給実績(支給割合)と職員の年間の支給月数を比較。職員の支給月数が民間の支給割合を0.10月分下回る。
民間の支給割合(A) |
職員の支給月数(B) |
差(A-B) |
4.50月分 |
4.40月分 |
0.10月分 |
(2)給与改定の内容(令和5年4月1日から実施)
ア 月例給
公民較差の状況及び人事院勧告における俸給表の改定内容を勘案して、給料表を改定。初任給を始め若年層に重点を置いて引上げ
イ 期末・勤勉手当(ボーナス)
民間の年間支給割合に見合うよう、0.10月分引上げ
・4.40月分 → 4.50月分(引上げ分は期末手当及び勤勉手当に均等に配分)
[参考] 職員(行政職)の年間給与(月例給+ボーナス)の平均額
改定前 |
改定後 |
増減額 |
6,046,039円 |
6,149,889円 |
103,850円(1.72%) |
(3) その他の課題
ア 会計年度任用職員の給与制度については、本年5月の地方自治法の改正により令和6年度から支給が可能となった勤勉手当の取扱いを含め、引き続き、適切な運用が図られるよう、所要の検討を行う必要がある。
イ 医師及び獣医師の給与上の処遇については、人材確保の観点から、国や他の都道府県の状況等を踏まえ、所要の見直しを検討する必要がある。
ウ 本年、人事院は、在宅勤務等を中心とした働き方をする職員の在宅勤務等に伴う光熱・水道費等の費用負担を軽減するため、在宅勤務等手当の新設について、報告及び勧告を行った。
本県においても、在宅勤務は実施されていることから、今後の国における法改正や他の都道府県の動向等を注視していく必要がある。
エ 公立学校の教育職員については、それぞれの職務や勤務の実態を踏まえ、教育職員の意欲や能力の向上に資する処遇改善の検討が国において進められている。
また、国の法整備を受け、近年、夜間中学校(学級)の設置が全国的に進んでおり、そこに勤務する教育職員の特殊性や困難性等に対する手当の措置も行われている。
これらの状況を踏まえ、教育職員の給与の在り方について、国や他の地方公共団体の動向にも留意しながら、調査・研究を進めていく必要がある。
(4)社会と公務の変化に応じた給与制度の整備
人事院は、昨年、能率的で活力があり、一人一人が躍動できる公務組織の実現に向けて様々な取組を進める中で、給与制度についても、社会と公務の変化に応じたアップデートを図っていく必要があると報告し、本年、この給与制度のアップデートについて、令和6年に向けて措置を検討する事項の骨格案として、人材の確保への対応、組織パフォーマンスの向上、働き方やライフスタイルの多様化への対応等について報告した。
この給与制度の整備については、今後も、人事院の検討状況や他の都道府県の動向等を注視していく必要がある。
3 意見
(1)人材の確保及び育成について
ア 有為な人材の確保
職員採用試験の受験者数は減少傾向が続いており、今後も職員採用を取り巻く環境は、一層厳しくなることが予想される。
本委員会では、今後も県職員の仕事のやりがいや魅力について、しっかりと伝わるよう、ホームページの内容を工夫するなど、任命権者と緊密に連携を図りながら、受験者確保に取り組んでいく。
また、多様な受験者層から優秀な人材を確保していくため、民間経験者等の積極的誘致を図る試験内容の見直しをはじめ、採用試験全般の見直しを進めていく。
イ 女性の活躍推進
任命権者においては、組織の活力向上及び政策方針決定過程への参画拡大を図るため、特定事業主行動計画に基づき女性職員の登用を行っており、一定の成果をあげているところである。
女性の活躍を推進することは、誰もが働きやすい社会の実現に寄与するものであり、今後も引き続き、計画に基づき女性職員の活躍をより一層推進していく必要がある。
ウ 人事評価制度に基づく適正な人事管理
本県の人事評価制度は、全職員を対象に給与への反映がされており、既に制度として職員に受け入れられているところである。任命権者は、引き続き、運用実態の検証や評価者である管理職員のスキル向上などに努め、職員の理解と納得感を高めながら適正な人事管理を進めていく必要がある。
(2)働き方改革の推進と勤務環境の整備等について
ア 長時間労働の是正等
長時間労働は、職員の心身の健康を損なうおそれがあるのみならず、仕事と生活の両立や労働意欲保持に影響を及ぼすものであるため、組織を挙げて強い姿勢で、その是正に取り組む必要がある。
任命権者においては、なお一層、業務量に応じた人員の確保や適正な配置、事務事業の精選や効率化の推進などについて、実効性を確保していくことが肝要である。
また、長時間労働に従事した職員が医師の面接指導を確実に受けることができるようにするとともに、医師からの意見を勘案し、当該職員の実情に応じた措置を講じる必要がある。
イ 教職員の働き方改革
教育の質の維持・向上や教職員が児童生徒としっかりと向き合うための時間の確保・充実のため、また、教職員が心身ともに健康でやりがいを持って安心して働き続けることができるようにするため、働き方改革を進めることは重要である。
県教育委員会においては、現在実施している取組の結果を検証し、より効果的な取組を着実に推進していくことが必要である。併せて、市町村教育委員会と連携を図るとともに、市町村教育委員会や小中学校の取組を支援していく必要がある。
ウ 多様な働き方の推進及び仕事と生活の両立支援
任命権者においては、多様な働き方について、現行の制度の活用状況や職員のニーズを踏まえ、国の「柔軟な働き方を実装するための制度改革」について注視するとともに、他の都道府県、民間労働法制の動向にも留意しながら、引き続き検討し充実を図る必要がある。
また、全ての職員に対し、妊娠、出産、育児等と仕事の両立を支援するための制度や、多様な働き方が幅広く利用されるよう周知を図るとともに、職場におけるサポート体制を拡充していく必要がある。
エ ハラスメント防止対策
ハラスメントは決して許されないものであることから、任命権者においては、職員への研修や周知・啓発などの取組をしっかりと行う必要があり、管理職をはじめとする全ての職員は、誰もがハラスメントの行為者となり得ることを十分理解した上で、自らの言動に注意を払い、他者を尊重して、ハラスメントのない職場づくりに取り組む必要がある。
オ メンタルヘルス対策
任命権者においては、互いに協力し合える風通しの良い職場づくり、メンタルヘルス不調を生じた職員の早期発見・早期対応、円滑な職場復帰のための支援、再発予防等にしっかりと取り組んでいくことが重要である。
カ 会計年度任用職員制度の適切な運用
会計年度任用職員が意欲を持ち、安心して働くためには、勤務環境や勤務条件の確保は重要であり、任命権者においては、引き続き、適切に制度を運用していくとともに、勤務条件について、不合理な取扱いが行われることのないよう継続して検討していくことが必要である。
(3)定年の引上げに関する制度の適切な運用について
任命権者においては、高齢期職員を含めた組織全体の活力が維持できる制度となるよう、職員に対して丁寧な情報提供を行うとともに、改正法の趣旨に沿って、適切に制度を運用していく必要がある。
本委員会においては、任命権者における制度の運用状況や人事院における定年前再任用短時間勤務職員等の給与の検討状況について注視していく。
(4)公務員倫理の徹底について
職員自身においては、自らの行動が県全体と県職員全体の信用に大きな影響を与えることをしっかりと自覚し、公務内外を問わず行動を厳しく律する必要がある。
任命権者においては、不祥事防止のため、職員の服務規律の確保について、一層の徹底を図る必要がある。また、管理職員は、風通しの良い職場づくりに取り組むことが重要である。