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個人情報保護審議会答申第15号
更新日:2016年1月5日更新
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「特別弔慰金却下処分に係る協議文書等に関する個人情報部分開示決定処分に係る異議申立て」の答申内容を公表します。
答申第15号
1 審議会の結論
福岡県知事(以下「実施機関」という。)が平成18年11月7日18国援第2645号で行った部分開示決定(以下「本件決定」という。)により不開示とした部分(以下「本件不開示部分」という。)のうち、別表「開示すべき個人情報一覧」に掲げる情報は、開示すべきである。
2 異議申立てに係る個人情報の開示決定状況
異議申立てに係る個人情報は、異議申立人の第6回特別弔慰金却下処分に係る厚生省社会・援護局援護課長(以下「厚生省」という。)との協議及び教示の事実を証明する文書(以下「本件公文書」という。)に記載された異議申立人の個人情報である。
実施機関は、本件公文書に記載されている情報のうち一部を、福岡県個人情報保護条例(平成16年福岡県条例第57号。以下「条例」という。)第14条第1項第1号に該当するとして不開示とし、その余の部分は開示するとして本件決定を行った。
なお、本件決定に係る開示の実施は未だ行われていない状況である。
3 異議申立ての趣旨及び経過
(1)異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、実施機関が行った本件決定を取消し、全部開示を求めるものである。
(2)異議申立ての経過
ア 平成18年10月23日付けで異議申立人は、実施機関に対し条例第13条第1項の規定に基づき、本件公文書に記載された異議申立人の個人情報の開示請求を行った。
イ 平成18年11月7日付けで実施機関は、本件決定を行い、その旨を異議申立人に通知した。
ウ 平成18年11月16日付けで異議申立人は、本件決定を不服として実施機関に対し異議申立てを行った。
4 異議申立人の主張要旨
異議申立人が主張している異議申立ての主たる理由は、次のとおりである。
(1)条例第14条第1項第1号該当性について
「開示請求者以外の個人に関する情報」を開示することが条例第14条第1項第1号に該当するとは考えない。
「正当な利益を害するかどうか」については、本人と第三者の関係において第三者が本人に知られたくないことに正当な利益があるかどうかを十二分に考慮し、判断されるべきである。
開示請求者が周知している事実は、例え第三者に関する個人情報であっても正当な利益を害することとなるとはいえないため、開示対象となる。
実施機関の部分開示理由説明書には、「本人と当該第三者との関係」を十分に考慮して個別に判断することが必要であることの具体的記載がない。
開示対象文書の中にある同順位者の氏名には、異議申立人との間における不可分的な情報が凝集している。
(2)条例第16条該当性について
異議申立人は実施機関の全行為を徹底糾明し得る権利がある。実施機関は自ら進んで異議申立人に全事実を開示しなければならない立場にある。
条例第16条は該当しないという実施機関の主張は、意味をなさない不適合な理由記載である。
(3)その他の主張について
本件異議申立人が特別弔慰金支給法(昭和40年法律第100号。以下「法」という。)に基づいて別途請求している特別弔慰金請求権の審査時期は来ているにも拘わらず実施機関は不必要に長期間保留・放置した。
実施機関は、本件異議申立人以外の者に対し、請求書の提出が本件異議申立人分よりも早いという理由のみで、しかも法第6条の規定を濫用し不法な支給裁定をした。
5 実施機関の説明要旨
実施機関が本件決定を行った理由を要約すると、次のとおりである。
(1)条例第14条第1項第1号該当性について
異議申立人は、異議申立人が実施機関を相手に起こした裁判の過程において第6回特別弔慰金を重複して請求した者(以下「重複請求者」という。)に関する情報を知っていることも推察できるが、条例第14条第1項第1号の「当該個人の正当な利益を害するおそれ」については、「本人と当該第三者との関係」を十分に考慮して個別に判断することが必要である。
異議申立人と重複請求者とは、特別弔慰金の裁定を巡って利害が対立する関係にあり、本件不開示部分が重複請求者以外の者の目に触れるなどして重複請求者の権利利益が害されるおそれがあることは否定できない。
本件不開示部分は、条例第14条第1項第1号に該当すると判断するものである。
(2)条例第16条該当性について
本件不開示部分が条例第16条に該当するとは認められない。
(3)その他の主張について
異議申立人のその他の主張は、本件決定に対する異議申立てとは関係ないものである。
6 審議会の判断
(1)本件公文書の内容及び性格について
ア 特別弔慰金について
昭和40年に法が制定され、戦後20年目の節目に当たり、改めて国として戦没者等に弔慰の意を表し、その遺族に対して特別弔慰金を支給することとされた。その後、10年の節目ごとに法による特別弔慰金の支給が行われている。
本件異議申立てに係る第6回特別弔慰金は、戦後50周年にあたる平成7年4月1日を基準日として、請求により額面40万円の記名国債が支給されるものである。
また、法第6条は、同一の死亡した者について特別弔慰金を受ける権利を有する者が数人ある場合においては、その一人のした特別弔慰金の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした特別弔慰金を受ける権利の裁定は、全員に対してしたものとみなすと規定している。
イ 本件公文書の内容と不開示情報
本件公文書の内容は、第6回特別弔慰金一つの請求権に対して異議申立人と重複請求者から請求がなされており、どちらに裁定するか、実施機関が厚生省に対して教示を求めるために作成した起案文書及び厚生省の回答文である。
起案文書は起案用紙、依頼文案、依頼文案の別紙である第6回特別弔慰金に伴う戦没者遺族2名からの重複請求について説明した資料(以下「別紙資料」という。)で構成されている。
起案用紙には不開示情報はない。依頼文案は、厚生省に教示を求めた文案であるが、そのうち重複請求者の氏名及び続柄が記載された部分を不開示としている。別紙資料については、標題の下に記載された重複請求者の氏名が記載された部分及びその右下の重複請求者の欄全体を不開示としている。
厚生省の回答文は、実施機関に対する回答であるが、そのうち重複請求者の氏名が記載された部分を不開示としている。
(2)条例第12条第1項の開示請求の対象となる個人情報について
条例第12条第1項は、何人も実施機関に対し当該実施機関が保有する公文書に記録されている自己の個人情報の開示を請求することができると規定している。つまり、条例に基づき開示請求できるのは、自己の個人情報に限られるものである。
本件不開示部分について審議会において見分したところ、別紙資料の重複請求者の欄に記載された情報のうち重複請求者の氏名及び続柄以外の部分には、重複請求者固有の個人情報が記載されていることが認められる。これを異議申立人の個人情報と見るべき特段の事情もなく、異議申立人の開示請求権が及ぶ範囲ではないと解される。
したがって、この部分は条例第14条第1項第1号に該当し不開示とするものではなく、条例第12条第1項の開示請求の対象外とすべきであった。
他方で、重複請求者の氏名及び続柄に係る部分については、特別弔慰金の制度上、支給対象となる遺族が特定されており、異議申立人と重複請求者が第6回特別弔慰金の請求について戦没者の子である2名の同順位者であることが明らかなことから、異議申立人の情報でもあるといえる。
したがって、重複請求者の氏名及び続柄については、異議申立人の個人情報として開示請求の対象となる自己の個人情報に該当するとみた上で、条例に従い開示の可否を判断する必要がある。
(3)条例第14条第1項第1号該当性について
条例第14条第1項第1号は、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示することにより、当該個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものについては不開示とする旨規定している。
なお、開示請求者本人が当該個人情報を知っている立場にあることが明らかな場合などは、正当な利益を害することにならないと解される。
重複請求者の氏名及び続柄については、異議申立人と重複請求者が第6回特別弔慰金について2名の同順位者の請求であることから、異議申立人が重複請求者の氏名及び続柄を知っている立場にあることが明らかであり、これを開示することにより重複請求者の正当な利益を害するおそれがあるとは認められない。
したがって、重複請求者の氏名及び続柄については、条例第14条第1項第1号に該当しないと解される。
(4)条例第16条該当性について
本件においては、上記(3)のとおり、開示請求の対象となる情報で不開示とする情報がないことから、条例第16条による裁量的開示の検討を要しない。
(5)その他の主張について
異議申立人は、本件異議申立人が法に基づいて行った特別弔慰金の請求を実施機関が却下したこと等に対し、詳細にわたり不服を主張している。
しかしながら、当審議会は、実施機関が行った不開示決定等の妥当性を判断する機関であるため、当該主張は当審議会の判断を左右するものではない。
以上の理由により「1 審議会の結論」のとおり判断する。
別表 開示すべき個人情報一覧
文書名 | 開示すべき個人情報 |
依頼文案 | 重複請求者の氏名及び続柄 |
別紙資料 | 標題の下に記載された重複請求者の氏名並びに重複請求者の欄に記載された重複請求者の氏名及び続柄 |
厚生省の回答文 | 重複請求者の氏名 |