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1.住宅宿泊事業法の概要
住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号。以下、「法」という。)は、事業を営む者の業務の適正な運営を確保しつつ、国内外からの観光旅客の宿泊に対する需要に的確に対応してこれらの者の来訪及び滞在を促進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の発展に寄与することを目的に、平成29年に制定された法律です。
この法に基づく住宅宿泊事業は、旅館業法とは異なり、都道県等への届出により事業を始めることができますが、営業日数の制限や定期報告の義務等、営業を営む上での制限や義務もあります。
項 目 |
住宅宿泊事業法 (住宅宿泊事業者) |
旅館業法 |
---|---|---|
所管省庁 | 観光庁、国土交通省、厚生労働省 | 厚生労働省 |
許認可等 | 届出 | 許可 |
届出(申請)先 |
都道府県知事又は保健所設置市等の長 ※福岡県では、県内全域の届出を 県(生活衛生課)で受け付けています。 |
管轄の保健所 |
営業日数の制限 |
年間提供日数180日以内 (年間:4月から翌年3月までの1年度) |
制限なし |
宿泊実績の定期報告 | 必要 | 不要 |
宿泊者名簿の作成・保存義務 |
あり 3年間保存 |
あり 3年間保存 |
最低必要床面積 |
一人当たり3.3平方メートル人以上 |
延床面積33平方メートル以上 ただし、宿泊者数10人未満の場合は、一人当たり3.3平方メートル以上 |
非常用照明等の安全確保の措置義務 |
あり ※家主居住型で宿泊室の面積が50平方メートル以下の場合は不要 |
あり 建築基準法に基づく規制 |
近隣住民とのトラブル防止措置 |
規定あり ※宿泊者への説明義務、苦情対応の義務等 |
規定なし |
法では、制度の一体的かつ円滑な執行を確保するため、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」という3つのプレーヤーが位置付けられており、それぞれに対して役割や義務等が決められています。
(1)住宅宿泊事業者
旅館業法第3条の2第1項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないものをいいます。
住宅宿泊事業を実施することができる「住宅」は、設備要件が備えられた施設でなければいけません。また、居住要件のいずれかに該当することが求められています。
【設備要件】(住宅宿泊事業法施行規則(平成29年厚生労働省・国土交通省令第2号)第1条)
住宅宿泊事業を実施する「住宅」には、次の設備が備えられている必要があります。
・台所
・浴室
・便所
・洗面設備
※近隣の浴室や併設店舗の台所等、届出住宅以外の設備で代替することはできません。
※ユニットバスのように、浴室、便所、洗面設備が一体となった設備の場合は、それぞれの設備があるものとみなします。
【居住要件】(住宅宿泊事業法施行規則第2条)
住宅宿泊事業を実施する「住宅」は、人の居住の用に供されていると認められる家屋であって、次のいずれかに該当することが必要です。
そのため、飲食店や事務所など、他の事業の用に供されている家屋では、住宅宿泊事業はできません。
(1)現に人の生活の本拠として使用されている家屋
「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」とは、現に特定の者の生活が継続して営まれている家屋であり、短期的に当該家屋を使用する場合は該当しません。
(2)入居者の募集が行われている家屋
「入居者の募集が行われている家屋」とは、住宅宿泊事業を行っている間、分譲(売却)又は賃貸の形態で、居住用住宅として入居者の募集が行われている家屋をいいます。
なお、社員寮として入居希望社員の募集が行われている家屋等、入居対象者を限定した募集がされている家屋もこれに該当します。
ただし、広告において故意に不利な取引条件を事実に反して記載している等、入居者募集の意図がないことが明らかである場合は、「入居者の募集が行われている家屋」とは認められません。
(3)随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋
「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」とは、生活の本拠としては使用されていないものの、その所有者等により随時居住利用されている家屋をいいます。
既存の家屋において、その所有者等が使用の権限を有しており、少なくとも年1回以上は使用している家屋である場合に該当します。居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションは、これには該当しません。
<随時居住の用に供されている家屋の具体例>
・別荘などの季節に応じて年数回程度利用している家屋
・休日のみ使用しているセカンドハウス
・相続により所有しているが、現在は常時居住しておらず、将来的に居住する予定の空き家
○市街化調整区域について
市街化調整区域が設定されている区域内では、開発行為が制限されており、住宅の用途変更や建築が制限されています。
市街化調整区域内の建築物(住宅)には、許可を受けた特定の人のみが居住できる住宅(属人性のある住宅)があり、許可を受けた人が居住していない状態では、住宅宿泊事業が実施できない場合があることに留意してください。
家主居住型 | 家主不在型 | |
---|---|---|
属人性のない建築物 |
○ 届出可 |
○ 届出可 |
属人性のある建築物 |
○ 届出可 |
× 届出不可 |
※市街化調整区域設定の有無、属人性のある建築物に該当するかなどについては、物件の所在する市町村にお問合せください。
【届出事業者の要件】(法第4条)
以下に該当する方は、法の規定により住宅宿泊事業の営業(届出)を行うことができません。
1.心身の故障により住宅宿泊事業を的確に遂行することができない者として国土交通省令・厚生労働省令で定めるもの
2.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
3.第16条第2項の規定により住宅宿泊事業の廃止を命ぜられ、その命令の日から3年を経過しない者(当該命令をされた者が法人である場合にあっては、当該命令の日前30日以内に当該法人の役員であった者で当該命令の日から3年を経過しないものを含む。)
4.禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律若しくは旅館業法の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して3年を経過しない者
5.暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)
6.営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代理人が法人である場合にあっては、その役員を含む。第25条第1項第7号及び第49条第1項第7号において同じ。)が前各号のいずれかに該当するもの
7.法人であって、その役員のうちに第1号から第5号までのいずれかに該当する者があるもの
8.暴力団員等がその事業活動を支配する者
(2)住宅宿泊管理業者
住宅宿泊事業者から委託を受けて、住宅宿泊管理業務を行う事業者をいいます。
住宅宿泊管理業務とは、法第5条から第10条までの規定による業務及び住宅宿泊事業の適切な実施のために必要な届出住宅の維持保全に関する業務をいいます。
住宅宿泊管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受ける必要があります。
詳しくは、下記URLを参照ください。
(3)住宅宿泊仲介業者
旅行業法第6条の4第1項に規定する旅行業者以外の者が、住宅宿泊事業者からの依頼を受けて、宿泊者との予約の取次や代理契約の締結等の住宅宿泊仲介業務を行う事業者をいいます。
住宅宿泊仲介業を営もうとする者は、観光庁長官の登録を受ける必要があります。
詳しくは、下記URLを参照ください。