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福岡県情報公開審査会答申第118号

更新日:2015年4月14日更新 印刷

「特定政治団体の平成17年分収支報告書の非開示決定処分に対する異議申立て」の答申内容を公表します。

答申

1 審査会の結論

 福岡県選挙管理委員会(以下「実施機関」という。)が、平成18年5月16日18選管第36号の5で行った非開示決定(以下「本件決定」という。)は、これを取消すべきである。

2 異議申立てに係る対象公文書の開示決定状況

 異議申立てに係る対象公文書(以下「本件公文書」という。)は、政治資金規正法(昭和23年法律第194号。以下「法」という。)第12条第1項又は第17条第1項に基づいて、政治団体が実施機関に提出した平成17年分の収入と支出等を記載した収支報告書である。

 実施機関は、本件公文書については、福岡県情報公開条例(平成13年福岡県条例第5号。以下「条例」という。)第7条第1項第4号に該当するとして本件決定を行った。

3 異議申立ての趣旨及び経過

(1) 異議申立ての趣旨

 異議申立ての趣旨は、実施機関が行った本件決定の取消しを求めるというものである。

(2) 異議申立ての経過

ア 平成18年4月27日付けで、異議申立人は、実施機関に対し条例第6条の規定に基づき、本件公文書の開示請求を行った。

イ 平成18年5月16日付けで、実施機関は、本件公文書に記載されている情報が条例第7条第1項第4号に該当するとして本件決定を行い、その旨を異議申立人に通知した。

ウ 平成18年6月1日付けで、異議申立人は、本件決定を不服として実施機関に異議申立てを行った。

4 異議申立人の説明要旨

 異議申立書における異議申立人の主張を要約すると、次のとおりである。

(1) 法第20条第1項及び第20条の2の規定に定めるとおり、政治団体の収支報告書は、公表されることを前提に提出された文書であり、そもそも非開示文書の対象ではない。

(2) 政治団体の収支報告書は、法第31条の規定に基づく実施機関の「審査」を得なくとも、実施機関に提出した段階で文書としては完成しているものであって、収支報告書の開示が「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」はない。

 仮に、政治団体の収支報告書に不備等があったとしても、それはその政治団体の自己責任であり、その結果、「国民に的確な情報が提供されなかった」としても、その政治団体の収支報告書が誤りであるだけで、実施機関の審査事務の適正な遂行に障害となるわけではない。

5 実施機関の説明要旨

 実施機関が本件決定を行った理由を要約すると、次のとおりである。

(1)政治団体から提出された収支報告書については、国民に的確な情報が提供されるよう、形式上の不備がないか、記載すべき事項に不十分なものがないかを審査した上で、例年11月を目途に、その要旨を県公報で公表している。

 また、要旨を公表した日から3年間、閲覧に供している(法第20条の2)。

(2)当該審査の過程においては収支報告書の数値等について訂正される場合があり、当該審査中に収支報告書を開示した場合には、国民に的確な情報が提供されず、公表事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。

 また、報告者に不測の不利益を与える場合も考えられる。

(3)収支報告書の審査については、限られた期間のうちに、約2,200団体の収支報告書について審査を実施しているため、この審査過程において、個別の政治団体の収支報告書について開示をした場合、審査事務の混乱を招き、審査事務の適正な執行に支障を来すおそれがある。

6 審査会の判断

(1)本件公文書の内容及び性格について

 本件公文書は、法の規定に基づいて、本県の区域において主としてその活動を行う政治団体(政党及び政治資金団体を除く。)が、平成17年12月31日現在で、当該政治団体に係る平成17年の収支報告書を平成18年1月1日から3月以内(本県の場合は、6月30日まで受け付ける。)に、実施機関に提出したものである。

 なお、法の規定は、収支報告書を受理した実施機関は、その要旨を県公報により公表(本県の場合は、例年11月頃公表)することとなっており、また、何人も収支報告書の要旨が公表された日から3年間、当該収支報告書の閲覧を請求することができるとしているが、本件公文書は、閲覧期間前に情報公開請求されたものである。

(2)収支報告書の閲覧に支障を及ぼすおそれについて

ア 閲覧期間前の開示について

 法第20条の2第2項は、「何人も、前条第1項の規定により報告書の要旨が公表された日から3年間、総務大臣の場合にあっては総務省令の定めるところにより、都道府県の選挙管理委員会の場合にあっては当該選挙管理委員会の定めるところにより、当該報告書又は書面の閲覧を請求することができる」と規定している。

 この規定は収支報告書の閲覧を請求することができる期間等を定めているものであるが、その期間前の収支報告書の公開について、これを認めないとするものではない。

 したがって、当該閲覧期間前においては、上記のとおり、法に公開を禁止する規定がない以上、実施機関には、条例に従った適切な対応が求められるのであり「要旨の公表を行うまでは、収支報告書を非開示情報として取り扱うべきものと考える」とする実施機関の主張は認められない。

イ 収支報告書が訂正される場合について

実施機関は、収支報告書に形式上の不備があり、又はこれらに記載すべき事項の記載が不十分であると認めるときは、当該収支報告書を提出したものに対して、説明を求め、又は当該収支報告書の訂正を命ずることができるとされているが、この審査は、形式の審査にとどまっており、審査を行うこと自体も義務とはなっていない。

 実際、閲覧開始後も収支報告書の訂正が行われていることから、審査を行ったからといって、収支報告書の内容に誤りがないとはいえない。

 また、収支報告書について、情報公開請求による公開と法による閲覧とで、その内容に異同があったとしても、必要に応じ、訂正されることは当然あり得ることから、問題があるとはいえない。

 以上のことから「国民に的確な情報が提供されず、公表事務の適正な遂行に支障を及ぼす」とする実施機関の主張は認められない。

(3)収支報告書の審査事務に支障を及ぼすおそれについて

 実施機関は、限られた期間のうちに、約2,200団体の収支報告書について審査をしているため、収支報告書の閲覧期間前の情報公開請求により、審査事務の混乱を招くとするが、そのような事態は、一般的には想定しがたく、合理性を欠くといわざるを得ない。 また、現実に審査事務が滞るのであれば、条例第12条第2項の規定に基づいて、開示請求に対する決定期間を延長することで対応すべきであり、当該情報公開請求により事務量が嵩むことをもって、「審査事務の適正な執行に支障を来すおそれがある」とする実施機関の主張は認められない。

 以上のことから、条例第7条第1項第4号には該当しないと判断する。

 以上の理由により「1 審査会の結論」のとおり判断する。

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