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平成23年度県内市町村普通会計決算(速報)
平成24年9月28日に報道発表した資料です。
1 決算規模
県内市町村(政令市を除く58市町村)の平成23年度普通会計決算は、歳入総額が1兆399億円、歳出総額9,986億円となり、前年度と比較して、歳入が△205億円(△1.9%)、歳出が△233億円(△2.3%)減少した。
歳入については、臨時財政対策債、普通建設事業に係る国庫支出金が減少したこと、歳出については、普通建設事業費等が減少したことが、主な原因となっている。
2 決算収支
(1) 平成23年度における歳入歳出差引額(形式収支)は、413億円の黒字である。
(2) 上記の形式収支から、明許繰越等のため翌年度に繰り越すべき財源を控除した実質収支は、344億円の黒字である。なお、実質収支が赤字の市町村はない。
3 歳入の状況
平成23年度の歳入総額は1兆399億円で、地方税(+38億円、+1.3%)、地方交付税 (+67億円、+2.5%)等が増加したものの、臨時財政対策債( △105億円、△18.7%)、普通建設事業に係る国庫支出金(△181億円、△69.7%)が減少したこと等により、前年度 (1兆604億円)と比較して、△205億円(△1.9%)減少した。
なお、使途が特定されず、どの経費にも自由に充てることができる一般財源は前年度と比較して、87億円(1.5%)増加し、歳入全体に占める構成比も58.0%となり、前年度の56.0%から2.0ポイント上昇した。
主な歳入の状況は次のとおり。
(1) 地方税は、市町村たばこ税が県内全ての市町村において増収となり、24億円(15.1%)の増となったほか、固定資産税の家屋分が16億円(2.5%)の増、市町村民税の法人税割が15億円(11.6%)の増となった。
しかし、一方で、市町村民税の所得割が△11億円(△1.1%)の減となったほか、固定資産税の土地分が△8億円(△1.7%)の減、償却資産分が△7億円(△3.5%)の減となったことから、地方税全体としては前年度比で38億円(1.3%)の増に留まった。
(2) 地方譲与税は、地方揮発油譲与税が△2億円(△7.7%)の減となったことにより、前年度と比較して△2億円(△2.3%)減少した。
(3) 地方特例交付金等は、減収補てん特例交付金が4億円(19.7%)の増となる一方で、児童手当及び子ども手当特例交付金が△10億円(△44.7%)の減となったことにより、前年度と比較して△6億円(△14.6%)減少した。
(4) 地方交付税は、特別交付税が△5億円(△1.5%)の減となる一方で、生活保護費等の伸びに伴い普通交付税が72億円(3.1%)の増となったことにより、前年度と比較して67億円(2.5%)増加した。
(5) 国庫支出金については、生活保護費負担金(+55億円、+11.7%)や児童手当及び子ども手当交付金(+42億円、+12.4%)等は増加しているが、それを上回る額の普通建設費支出金(△181億円、△69.7%)が減となったことにより、前年度と比較して△149億円(△8.6%)減少した。
(6) 地方債については、公共事業等債が△29億円(△43.8%)の減、教育・福祉施設等整備事業債が△33億円(△47.9%)の減、臨時財政対策債が△105億円(△18.7%)の減となったこと等により、前年度と比較して△191億円(18.5%)減少した。
4 歳出の状況
平成23年度の歳出決算額は9,986億円で、義務的経費である扶助費(+112億円、+5.1%)等が増加したものの、普通建設事業費(△295億円、△21.7%)や災害復旧事業費(△50億円、△74.0%)といった投資的経費が減少したことにより、前年度(1兆219億円)と比較して、△233億円(△2.3%)減少した。
性質別に見た歳出の状況は次のとおりである。
(1) 義務的経費(人件費、扶助費及び公債費)
人件費及び公債費が減となったものの、扶助費が増となったことにより、前年度と比較して99億円(2.0%)増加した。
人件費は、職員数の削減等により△6億円(△0.4%)減少した。
扶助費は、子ども手当や障害者給付金、生活保護給付金等の増により、112億円(5.1%)増加した。
公債費は、地域総合整備事業債等に係る元利償還金が減となったこと等により、△7億円(△0.6%)減少した。
(2) 投資的経費(普通建設事業費、失業対策事業費及び災害復旧事業費)
普通建設事業費、失業対策事業費及び災害復旧事業費のいずれも減少したことにより、前年度と比較して△370億円(△25.5%)減少した。
普通建設事業費は、学校施設整備事業や地域情報通信基盤整備事業等の縮小により補助事業費が△157億円(△27.5%)、学校給食センター整備事業、駅周辺整備事業、物産館等整備事業等の縮小により単独事業費が△140億円(△18.8%)とそれぞれ減少しており、普通建設事業費全体としては△295億円(△21.7%)減少した。
失業対策事業費は、平成18年度の特定地域開発就労事業終了後の暫定事業の終了により△24億円(△99.1%)減少した。
災害復旧事業費は、前年度と比較して△50億円(△74.0%)減少した。
(3) その他の経費(物件費、補助費等、積立金、繰出金及びその他)
物件費は、委託料の増等により、前年度と比較して74億円(6.3%)増加した。
補助費等は、国営土地改良事業繰上償還負担金等の減により、前年度と比較して△45億円(△4.2%)減少した。
積立金は、前年度と比較して△30億円(△8.6%)減少した。
繰出金は、後期高齢者医療事業会計への繰出額が24億円の増となったほか、介護保険事業会計(保険事業勘定)への繰出額が13億円の増、国民健康保険事業会計(事業勘定)への繰出額が12億円の増となったこと等により、前年度と比較して42億円(4.4%)増加した。
5 経常収支比率の状況
経常収支比率は、経常的な経費に充てる一般財源に経常一般財源がどの程度充当されたかによって財政構造の弾力性を判断する指標である。
この比率が100%を超えると、人件費、扶助費、公債費を中心とする経常的経費に充てる一般財源が地方税や普通交付税などの毎年度収入することが見込まれる使途が限定されない経常一般財源だけでは賄えなくなり、臨時的な歳出に対して、弾力的に対応できなくなる。
平成23年度の経常収支比率(単純平均)は、88.9%で、前年度(87.7%)と比べて1.2ポイント増加したが、これは、分子である人件費、物件費等の経常的経費に充てた一般財源が31億円(0.6%)増となった一方、分母である地方特例交付金等の経常一般財源等については△13億円(△0.2%)減少したためである。
なお、前年度同様、経常収支比率が100%以上の市町村はない。
6 健全化判断比率の状況
平成19年6月に公布された財政健全化法においては、地方公共団体の財政の健全性に関する比率として、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率及び将来負担比率の4つの財政指標が健全化判断比率として定められている。
これらの比率については、議会に報告し、公表することが義務付けられており、また、健全化判断比率のいずれかが悪化し、早期健全化基準以上である場合には、財政健全化計画を議会の議決を経て策定し、公表すること等が義務付けられている。
平成23年度決算に基づく健全化判断比率(速報値)の状況は、次のとおりである。。
(1)実質赤字比率
実質赤字比率は、一般会計等における歳出に対する歳入の不足額(実質赤字額)を地方公共団体の一般財源の標準的な規模を表す標準財政規模の額で除したものである。
この比率が高くなる場合、その年度における歳入の、歳出に対する実質的な不足額が増大し、歳入と歳出の不均衡が拡大していることになる。その解消には、従来より多くの歳出削減策や歳入増加策が必要となるため、赤字の解消期間も長期間にわたる可能性が高くなり、その団体の財政運営は困難な事態に陥る。
実質赤字額が生じた県内市町村はない。
(2)連結実質赤字比率
連結実質赤字比率は、地方公共団体のすべての会計の赤字額と黒字額を合算して算出された連結実質赤字額を、標準財政規模で除したものである。
一般会計等が黒字であるにも関わらず、この比率が高くなっている場合、その団体の会計のうち一部の会計において赤字額が増大しており、その団体全体の財政運営において問題が生じていることを示している。
連結実質赤字額が生じた県内市町村はない。
(3)実質公債費比率
実質公債費比率は、地方公共団体の一般会計等の支出のうち、義務的経費である公債費(地方債の元利償還金)や公債費に準じた経費(準元利償還金)を、標準財政規模を基本とした額で除したものの3ヶ年の平均値である。
公債費や公債費に準じた経費は、削減したり、先送りしたりすることができないものであり、一度増大すると短期間で削減することは困難となる。実質公債費比率が高まると財政の弾力性が低下し、他の経費を節減しないと収支が悪化し、赤字団体となる可能性が高まることとなる。
県内市町村の実質公債費比率の平均(単純平均)は、既発債の償還終了などによる実質的な公債費負担額が減少したこと等により、前年度から0.8ポイント減の10.6%である。また、地方債の発行に際して許可が必要となる18%以上となったのは、粕屋町(18.8%)のみである。
(4)将来負担比率
将来負担比率は、地方公共団体の一般会計等が将来的に負担することになっている実質的な負債に当たる額(将来負担額)を把握し、この将来負担額から負債の償還に充てることができる基金等を控除の上、標準財政規模を基本とした額で除したものである。
将来負担額は、地方公共団体が発行した地方債残高のうち一般会計等が負担することになるものに限らず、土地開発公社や損失補償を付した第三セクターの負債等も含め、決算年度末時点において想定される地方公共団体の将来負担を把握するものである。
将来負担比率が高いほど、当該団体の一般財源規模に比べ将来負担額が大きいということであり、今後実質公債費比率の増大等により財政運営が圧迫されるなど、問題が生じる可能性が高くなる。
県内市町村の将来負担比率の平均(単純平均)は、地方債現在高が減少したこと等により、前年度から8.7ポイント減の35.3%である。
7 その他
(1)地方債現在高の状況
平成23年度末の地方債現在高は9,634億円となった。臨時財政対策債及び旧合併特例事業債等は増加しているが、全体的には減少しており、前年度末と比較して、△207億円(△2.1%)減少した。
(2)積立金現在高の状況
平成23年度末の積立金の現在高は、3,709億円となり、前年度末と比較して254億円(7.3%)増加した。
基金別にみると、財政調整基金の現在高は1,364億円(+155億円、+12.8%)、減債基金の現在高は458億円(+48億円、+11.7%)、その他特定目的基金の現在高は1,887億円(+50億円、+2.7%)といずれも増加した。
8 まとめ
平成23年度の県内市町村(政令指定都市を除く)の決算は、歳入、歳出ともに平成19年度以来4年ぶりに減少し、経常収支比率も4年ぶりに増加した。
実質収支が赤字である市町村や、経常収支比率が100%を超える市町村はないが、県内市町村の半数に近い28の市町村において経常収支比率が90%を超えており、依然として財政構造は硬直化し、弾力性に乏しい財政状況にあると言える。
平成23年度決算においては、国庫支出金や臨時財政対策債等の歳入が減少する中、税率改正(平成22 年10 月)による市町村たばこ税の増収などにより地方税収入が増加したが、市町村民税の所得割はここ数年減少を続けており、今後の景気の動向によっては、市町村の貴重な自主財源である地方税収入が落ち込み、財政状況が一層厳しくなることも考えられる。一方で、急速に進展する少子化・高齢化をはじめとする社会経済の変化に伴って、行政ニーズはますます多様化していくものと予想される。
市町村においては、多様化する行政ニーズに柔軟に対応していくため、滞納整理や新たな財源の発掘による歳入の確保、事務事業の見直しや組織の簡素効率化による歳出の削減等により、中・長期的視点に立った計画的な財政運営を行うことが求められる。