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事業主のみなさま、人を雇うときには労働条件を知らせていますか?
人を雇うときには、労働条件をハッキリと示しましょう!
人を雇うときには、賃金や労働時間をハッキリと示さなければなりません。
示さないとトラブルの原因になります。
これは、法律でも決まっており罰則規定もあります。
〇使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
(労働基準法第15条第1項)
〇次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(略)第15条第1項(略)の規定に違反した者
(労働基準法第120条第1項第1号)
有期労働契約は、更新ごとに、明示しなければなりません。
どのような労働条件を示さなければならないの?
示さなければならないものは次の<必ず示さなければならないもの>、<定めるときには、示さなければならないもの>のとおりです。
(労働基準法施行規則第5条第1項、第5項、第6項)
示さなければならないものがたくさんあるけど、「労働条件通知書」というものもあって紹介するので、最後まで見てね。
※PDFのリンク先は(一般労働者用・常用、有期雇用型)です。
<必ず示さなければならないもの>
1 労働契約の期間に関する事項
2 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項
有期労働契約=期間の定めのある労働契約
※通算契約期間又は有期契約の更新回数に上限の定めがある場合には上限を含みます。
※労働契約を更新する場合があるものに限ります。
※契約期間内に労働者が無期転換申込みをすることができる場合は、申込みに関する事項と申込み後の労働条件の明示事項を示さなければなりません。方法も同じです。
3 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)
4 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇
労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
所定労働時間=事業所において規則等で定めた労働時間
法定労働時間=労働基準法で上限としている労働時間、原則、休憩時間を除き、1日に8時間、1週に40時間以内
法定労働時間を超えた労働時間には、25%等の割増賃金が義務付けられます。
所定労働時間≦法定労働時間(所定労働時間は法定労働時間以下となります。)
5 賃金(退職手当、賞与、臨時に支払われる賃金を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
6 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
1から6は、5の昇給に関する事項を除き、書面の交付となります。
※次は、適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで足ります。
4 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇(所定労働時間を超える労働の有無を除きます。)
6 退職に関する事項
(H11.1.29 基発第45号 労働省労働基準局長通達)
<定めるときには、示さなければならないもの> ※定めないときには、不要
7 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
8 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与、1月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当等、最低賃金額に関する事項
9 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
10 安全及び衛生に関する事項
11 職業訓練に関する事項
12 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
13 表彰及び制裁に関する事項
14 休職に関する事項
そして、クマ社長は悲鳴を上げます!
こんなにたくさんあるの?
罰金もあるの?
フクロウ先生、こんなの我が社ではムリだー
大丈夫だよ、クマ社長!
労働条件通知書があり、厚生労働省のホームページの主要様式ダウンロードコーナー(クリック!)からダウンロードできるんだ。
※PDFのリンク先は(一般労働者用;常用、有期雇用型)です。
というわけで、切り札、労働条件通知書です。
「労働条件通知書」とは「賃金、労働時間その他の労働条件」を明示した書面です。
「労働条件通知書」の様式には、特段の決まりがありませんが、厚生労働省のホームページの主要様式ダウンロードコーナー(クリック!)には、これらの明示条件を反映したひな型が掲載されていますので、参考とする企業さまも多いようです。
・ひな型として、次があります。日雇型もあります。
【一般労働者用・常用、有期雇用型】
【短時間労働者用・常用雇用型】
【派遣労働者・常用雇用型】
【建設労働者用・常用雇用型】
【林業労働者用・常用雇用型】
・PDFだけでなく、Wordのデータも様式がダウンロードできます。
・労働条件を明示する書面の様式は自由です。必要な部分を抜粋して使用することもできます。
※適用部分を明確にして就業規則を労働契約の締結の際に交付しても問題ありません。(H11.1.29 基発第45号 労働省労働基準局長通達)
※賃金に関する事項は、その労働者に確定できるものであればよく、採用時に交付される辞令等に、就業規則等に規定されている賃金等級が表示されたものでも問題ありません。(S61.6.6 基発第333号 労働省労働基準局長通達)
・厚生労働省のホームページの主要様式ダウンロードコーナー(クリック!)には、その他の労働基準法等関係主要様式があります。
※「労働条件通知書」は、ページの頭では見つかりませんが「労働基準監督署に申請または届出する場合に使う様式」欄の下に「必要に応じて事業場で使用してください」の欄があり、ここにあります。
※「労働者名簿」、「賃金台帳」等企業が作成しなければならない様式もあります。
※2024年4月から労働条件の明示条件が追加されました。
インターネットで検索すると古い様式が検索されることがあるので気を付けてね。
教えて!フクロウ先生!
Q1 「書面の交付」だけど、メールはダメ?
A 労働者が、次の方法を希望した場合は電子メール等でできるよ。
(労働基準法施行規則第5条第4項)
・ファクシミリ(ファックス)の利用
・電子メール等(労働者が電子メール等を出力し、書面を作成することができるものに限るよ。)
※あくまでも、労働者が希望した場合だよ。会社が一方的にメールを送り付けるのはだめだよ。
Q2 労働条件はいつ知らせるの?
A 労働基準法(第15条第1項)には「労働契約の締結に際し(略)明示しなければならない」
労働契約法(第6条)には「労働契約は(略)労働者及び使用者が合意することによって成立する」
とあり、入社時または内定時に知らせているようだよ。
ちなみに、次のことはアウト!だよ。
・忙しいからと、入社1か月後(就労後)に渡す。(アウト!)
・試用期間が終了してから渡すと言って、すぐに渡さない。(アウト!)
・大事なものなので会社の金庫で保管すると伝えて渡さない。(アウト!)
(常総労働基準監督署 監督・安衛課「労働条件の明示を適切に行っていますか?(令和2年12 月)」参考)
Q3 実は、知らせた労働条件は、少し違うんだ…
A 知らせた労働条件が違うと、労働者は即時に労働契約を解除することができるんだ。
(労働基準法第15条第2項)
余談だけど、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合には、使用者は、必要な旅費を負担しなければならないんだ。
(労働基準法第15条第3項)
クマ社長!正確な労働条件を知らせてね。
2024年4月から労働条件の明示事項が追加されました。
すべての労働者
【明示のタイミング】
労働契約の締結時と有期労働契約の更新時
【新しく追加された明示事項】
就業場所・業務の変更の範囲
「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わる可能性のある就業場所・業務の範囲を指します。
※配置転換等に関する労働相談も見られます。
トラブル防止のため、これらを明確にしましょう。
有期契約労働者
【明示のタイミング】
有期労働契約の締結時と更新時
【新しく追加された明示事項】
更新上限の有無と内容
※併せて、最初の労働契約の締結より後に更新上限を新設・短縮する場合は、その理由を労働者にあらかじめ説明することが必要になります。
【明示のタイミング】
無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時
※無期転換ルールとは、同一の使用者との間で、有期労働契約が通算5年を超えるときは、労働者の申込により、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換する制度です。
【新しく追加された明示事項】
無期転換申込機会、無期転換後の労働条件
※併せて、無期転換後の労働条件を決定するに当たって、就業の実態に応じて、正社員等とのバランスを考慮した事項について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないことになります。
(厚生労働省ホームページ「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」(クリック!) より)
フクロウ先生、既に雇用している労働者にも改めて新たに労働条件明示が必要なの?
既に雇用している労働者には、改めて明示する必要はないよ。
新たな明示ルールは、令和6年4月1日以降の労働契約に適用されるんだ。
もっとも、労働者の理解を深めるため、再度を行うことは望ましい取組だね。
(「令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A」より)
「令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A」は、他の疑問にも回答しているから、疑問に思ったら確認してね。