海の水は、太陽の熱により蒸発し、やがて雨となって森を潤し、その水が川に流れ、そして海に到達します。こうした水の循環は、私たち人間だけでなく、多種多様な生態系を維持し、生物が生きていくために不可欠なものとなっています。しかし、人々の生活の変化に伴い、山や川、海にもさまざまな問題が発生しています。そのような中、県内では多くの団体が豊かな海を後世に残していくための取り組みを行っています。
多くの恵みをもたらす
豊かな海に
栄養たっぷりの水は、海に流れ込み、海藻を育て、藻場を作ります。藻場は、多くの生物の餌場、隠れ家、産卵場となり、海の生態系で大きな役割を果たしています。近年、ゴミの流入や海藻の減少なども見られるため、漁業者を中心に、海底ゴミの撤去や藻場の保全活動を行っています。
漁業者は、漁場環境改善を取り組むだけでなく、次代を担う子どもたちにその重要性を伝える活動も行っています
生きるために必要な
水を送りだす
森で作られた栄養分を蓄えた水は川へと流れ込み、そこに生息する多くの生物によって、さらに浄化されます。川は、私たちの生活に欠かすことのできない飲み水や農業用水などを供給してくれると同時に、多くの生態系を育みます。これらの豊かな水は、海へと運ばれ、さらに多くの生命を育んでいきます。
生物が住みやすい環境にするために、地元住民などの協力により、河川の清掃や除草などの環境改善活動を行っています
質の良い水をつくり、
蓄える
たくさんの木々が育つ山。この木々の落ち葉は微生物たちにより分解され、腐葉土となります。腐葉土が雨をしっかりと吸収し、雨に含まれるゴミや不要な物質を取り除き、窒素やミネラルなどの栄養分を蓄えた水が作られます。この栄養たっぷりの水は地下水となり、やがて川を形づくります。
竹林は放っておくと他の木々の成長を妨げ、生物たちの生態にも影響を与えてしまうため、定期的に伐採し森の環境づくりを行っています
平成29年、世界遺産登録を受けた「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群。
古くから、沖ノ島と信仰を大切に守り続けている宗像の海が、海藻の減少や漂着ごみなどによる環境問題に晒(さら)されています。
こうした問題を、地元から発信し、支援できることを考えよう、と4年前から活動が始まった「宗像国際環境100人会議」。宗像市や地域づくりに関連する団体、大学研究者、企業などが中心となり活動しています。
今年は「海の鎮守の森」構想と銘打ち、海をメインテーマに、地球環境問題について協議するフォーラムや、中・高生を中心に市民参加型のフィールドワークを開催。
「環境問題に対する取り組みは、長い年月をかけて続けていくことが大事。だからこそ、地元でしっかりと実行していかなければならないと思っています」と事務局長の養父信夫(ようふのぶお)さん。この取り組みは次の世代へしっかりと引き継がれていきます。
今年は、PM2.5などが海に与える影響などの世界の環境問題を映像で発表。また、地元の漁師なども参加するシンポジウムも開催された
宗像国際環境会議実行委員会 事務局長 養父信夫さん。手元には、竹林の伐採時の竹を利用して作成した漁場再生のための募金箱
むなかた「水と緑の会」
宗像市の環境保全を推進する「むなかた水と緑の会」。中でも、市内の全小学4年生を対象に開催される水辺教室は、約30年続く活動の一つです。宗像市を流れる釣川(つりかわ)の源流から河口まで、実際に現地へ移動し水の循環を知る貴重な授業です。地元中高生を対象とした「宗像国際育成プログラム」ではガイドを担当。「宗像の財産でもある豊かな自然に関心をもってもらえれば」と会長の福島敏満(ふくしまとしみつ)さんは話します。
上/川に入り生き物や植物に触れ、子どもたちも生き生きとした表情に 下/「子どもたちが興味深く話を聞く姿がうれしい」と福島さん
県立水産高等学校アクアライフ科
福津市の海に囲まれた県立水産高等学校。「自分たちでできることで、地元へ恩返しを」と8年前から始めた生徒たちの活動は、海に必要な栄養分が多く流れ込むように、その供給源となる森林を整備し、竹林整備から出た竹を有効活用することでした。試行錯誤を繰り返したどり着いたのが竹製の魚礁づくりです。宗像国際環境100人会議では、竹魚礁の成果などを生徒たちが自ら発表し、参加者から高い評価を得ました。
左上/竹魚礁づくりは、授業や放課後を利用して行っている 右上/海底に沈めた竹魚礁は魚の産卵場所や隠れ家となっている 下/アクアライフ科の皆さんと主任教諭・大山欣丈(おおやまよしたけ)先生
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