アサリ
有明海のアサリは、殻が薄く、身がずっしり。旬の春と秋には身が詰まり、うま味も増す
「ノリ漁師が家庭で作る、食べ飽きない味を再現しています」と話すのは、浜武漁協女性部部長の椛島秀子さん。ノリ佃煮の多くは、乾燥させた板ノリを煮溶かして作られますが、こちらでは風味・食感共に良い生ノリだけを使用しています。専用釜で約3時間かけてじっくりと煮詰める佃煮は、優しい海の香りが広がります。
浜武漁業協同組合 女性部 部長の椛島秀子(かばしま ひでこ)さん(写真中央)、古賀(こが)トモ子さん(同左)、荒巻美都恵(あらまき みとえ)さん
「一年を通して安定した味わいになるよう、取れたての生ノリはマイナス20度で保存しています」と話す椛島さん
生ノリ佃煮は明太子入りや梅肉入りなど6種類がそろう
その日の気温や湿度によって生ノリと調味料のバランスを調整し、出来上がりを均一に仕上げる
「生ノリ本来のおいしさを広く届けたい」という思いから、昨年8月に誕生した「有明海(福岡県産)湯掻きお刺身海苔」。産学官が連携し、試作を重ねること約3年。生ノリを加工する工程に工夫を凝らすことで、生のうま味と鮮度を保つことに成功しました。刺し身や吸い物、パスタなど、幅広い料理に活用できると注目を浴びています。
鮮度が落ちるのが早いため、地元漁師の間でしか味わえなかった生ノリ
沖端漁業協同組合
代表理事組合長
朱牟田新作(しゅむた しんさく)さん
「生ノリを手軽にどうぞ。天然のうま味成分や、さまざまな栄養素を豊富に含んでいます」
3月から10月にかけて有明海はガザミ漁で活気づきます。「有明海ガザミ育成会」では、春先はサンマを餌にしたカゴ漁、その後、さし網漁に移ります。「栄養豊富な有明海のガザミは甘さが違う」と堤幸夫会長。育成会では、稚ガニの放流のほか、体長12センチメートル以下と産卵直前のメス、秋に脱皮したメスも捕獲しないなどの取り決めをし、豊かな海づくりに力を注いでいます。
「3月から5月はメス、6月から10月はオスがおいしい」と話す堤さん。仕掛けたさし網は翌日に揚げる
有明海ガザミ育成会 会長
堤幸夫(つつみ ゆきお)さん(写真右)、妻・祐子(ゆうこ)さん
同会には約10隻の船が所属。「十数年、漁獲量は安定している」と言う。おすすめの食べ方は、ホットプレートでの蒸し焼きだそうだ
アサリは有明海を代表する魚介類の一つです。県では、漁場に砂をまいてアサリの発生を促す取り組みを行ってきました。一昨年、砂をまいた漁場を中心にアサリの稚貝が大量に発生。福岡有明海漁連と関係機関が連携し、保護区の設定や稚貝の移植を行った結果、多くの稚貝が成長。関係者は資源回復に確かな手応えを感じています。
福岡有明海
漁業協同組合連合会
境真秋(さかい まさあき)さん(写真右)、
西田裕一(にしだ ゆういち)さん
19の漁協が所属する連合会。資源保護のほか競争入札制度である共販を導入し、アサリの価格安定にも努めている
アサリ取りの道具「じょれん」
稚貝の成長を良くするため、密度が高い漁場から他の漁場へ移植・放流する
全国各地にリピーターが多い漁協オリジナルの佃煮は、組合員が取った生ノリが原料です。衛生管理が行き届いた加工場では、生ノリの味わいを引き出すよう地元の醤油などを使い、丹精込めて作られます。県内の学校給食にも出され、毎年12月に開催される「新のりフェア」では飛ぶように売れる商品です。
佃煮は3種類。よりやわらかく風味の良い一番摘み生ノリを使用した佃煮(右)は期間限定商品
雄大な自然の中で「むつごろう釣り」や伝統漁法の「くもで網漁」体験ができます。ムツゴロウは、干潮時にルアー釣りの要領で引っ掛けて岸から釣ります。くもで網漁は潮が満ちてから。海の上に立っているやぐらから海に網を沈め、しばらくして網を上げると有明海の幸が掛かります。期間は4月から10月、要予約。
「むつごろう釣り」(写真左)と「くもで網漁」。取った魚は市内の料理店で味わうこともできる
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