八幡〜香春〜築上〜平尾台 111キロメートル
Photo by Atsushi Tanno
耳に届くのは体が風を切る音とタイヤが路面をつかむ音。心地よいライドでは、自然と好みの音楽が頭に浮かび、目の前の風景とともに動き出す。気心知れた仲間と走るのは、そんな音楽を一緒に楽しむライブのようなものかもしれない。
今日のライドは八幡駅に集合、山あいを抜けながら久しぶりに平尾台まで回ることに。まずは南へ向かう緩やかな県道沿い、交差する一直線の急坂に遭遇するや否や、秘密基地を見つけたようにはしゃいで坂を駆け上がる3人。ここはロードレースで有名な山、モンテ・ゾンコランになぞらえて「ゾンコラン坂」と呼ばれる。地元の自転車愛好者たちに話題のスポットだ。この手ごわい坂も思い出に、河内貯水池(かわちちょすいち)の赤い鉄橋を渡り、さらに山あいへ。金辺峠(きべとうげ)を越えたカーブからは、採掘で平らな頂(いただき)となった香春岳(かわらだけ)がのぞく。のどかな雰囲気の採銅所駅(さいどうしょえき)を経由したら仲間が教えてくれたドライブインへ。しばらく体を休めたら平尾台が待つ後半ルートへ出発だ。
ヒルクライムの前にメタセコイアの並木が美しい築上町へ。知らなかった風景の前で縦走する3人も、異国感があっていい感じ。さて、平たんな道もこの辺りまで。南から平尾台を目指すカーブは右へ左へ。腰を浮かせ、息を切らしてペダルを回す。標高約500メートル、山頂付近の視界が開けると、黄金色のススキの一帯に点在する石灰岩が目の前に。岩肌と草原を抜ける一本の道、3人の車列が軽快な影を走らせていくさまは自然と音楽を重ねたくなる。日が暮れる淡いトーンに包まれる中、風を切る後ろ姿に赤いテールライトの帯が流れていった。
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