「うなぎの寝床」 代表取締役 白水高広(しらみず たかひろ)さん
八女市に残る白壁通りの界隈にある「うなぎの寝床」。筑後地方を中心に、福岡や近県の伝統工芸品を現代の暮らしに提案するアンテナショップとして人気です。昔ながらのものづくりを行う作り手も多い八女のまちで「作り手と使い手がつながる場所を作りたかった」という代表の白水高広さん。「ただモノを見せるだけではなくて、その背景にある土地や人の技術や想いを伝えるため、店が媒体になるということを考えています」。この店が担う役割や描く未来図に、伝統工芸品を長く継承するヒントがありそうです。
「伝統工芸品は、育まれる土地と人の間に歴史や文化があるので情緒的に語られますが、切実な後継者不足などもほぼ経済的な問題によるものです。私は生活や社会の中で伝統工芸が生かされて経済が成り立てば、文化や風土の継承はできる─伝えるべきはものづくりの源流で、筑後という土地の背景、元々住んでいた人たちがどう関わってものづくりが始まったかなどの歴史的な部分。そこに加わる作り手の技術や思想といった物語を丁寧に掘り起こすことが重要だと思っています」。
物語への共感がモノの価値をきちんと伝えるカギ。「そのために使い手には“自分ごと”として関わってもらう機会を増やすのが重要です」と白水さん。「例えば織元さんと知り合いになるとか、作り手に会って仲良くなるとか。そんな触れ合いで“自分ごと”として関わってほしいですね。主体的に取り組む人の声が大きな力となって共感者を増やしていくことが、経済を回し、伝統を継承するのに大切なことだと考えています」。
「うなぎの寝床」では暮らしに役立つ各地の伝統工芸品を取り扱う他、メーカーとして久留米絣のもんぺも販売
作り手を訪ねる「産業観光」も形にしていきたい、と白水さん。久留米絣のもんぺを着用して今日も店頭で“物語”を伝える
近くの旧寺崎邸では全国の工芸品を生活に提案。産地ごとの器を見るだけでも刺激的
問い合わせ
うなぎの寝床 所在地 八女市本町267 電話0943-22-3699
「博多曲物(まげもの) 玉樹」曲物師 柴田玉樹(しばた たまき)さん
日々の食生活には、木の特徴を生かした優れものを─博多曲物は、筥崎宮の祭事に関わりながら400年もの歴史を持つ伝統工芸品。従来は若杉山の杉を使ったとされる地産地消のもので、お湯で板を曲げて形を整え、桜の皮でとじて作られます。炊いたご飯を入れれば通気性の良さに加えて消臭効果も。板目に刻まれた年輪はそれだけで癒し効果もあるそう。
曲物はお櫃(ひつ)や弁当箱、お重などが定番です。「当たり前の曲物をしっかり作れて、初めて時代を担えるチャレンジができる」と18代目の柴田玉樹さん。「生活の器として手頃な価格に。手に取ってもらう道具であることが大事なんです」。何十年も生活を共にする道具として使える価値観を常に意識しています。
一方で、曲物を用いた水指や炭台、菓子器などの軽くて清涼感のある茶道具が全国の茶道家に認められるなど、新たな曲物の試みにも余念がありません。「ワインクーラーやICカードケース、CDケースなどの現代の雑貨としても可能性を広げたい。伝統を受け継ぐというのは基本を守るということ。その上で時代に即したものを作ることが伝統をつなぐことになると思うんです」。
「昔ながらの基本を踏まえた新しい自分の発想が必要」とチャレンジから生まれたワインクーラー(右上)と米粒の形をした弁当箱(右下)。二合お櫃(左下)の奥は三段重(左上)
工房は木型や道具に囲まれて、熟練の技術を感じることができる
「使ってもらって喜んでもらえることが元気の素」。職人として喜びを教えてくれた柴田さん
問い合わせ
博多曲物 玉樹 所在地 志免町別府西2-2-16 電話092-935-5056 ファクス092-935-5205
伝統的工芸品への理解と普及を図ることを目的とした「伝統的工芸品月間国民会議全国大会」が、30年ぶりに福岡県で開催されます。今年は「博多織伝来777年」、「久留米絣考案者(井上伝(いのうえ でん))没後150年」などの節目を迎える年であり、県内の博多織、博多人形、久留米絣、小石原焼、八女福島仏壇、上野焼、八女提灯といった7つの伝統的工芸品のみならず、全国から伝統工芸品が一堂に会し、技の実演・体験コーナーも予定されています。
ラグビーワールドカップ2019日本大会、東京2020オリンピック・パラリンピックを控え、福岡県から伝統的工芸品の素晴らしさと伝統文化の魅力を国内外に発信し、今後の産業振興につなげていきます。
問い合わせ 福岡県観光政策課 電話092-643-3454 ファクス092-643-3431
Copyright © 2018 Fukuoka Prefecture. All rights reserved.